
日本酒の会
秋田の酒とフレンチを楽しむ夜 – 大納川 × Restaurant TOYO Tokyo
2025年8月8日(金)、東京・Restaurant TOYO Tokyoにて、秋田の酒蔵「大納川」との特別イベント「日本酒の会」が開催されました。テーマは「秋田の酒とフレンチを楽しむ夜」。限定20名、完全予約制という贅沢な空間で、6種の日本酒とフレンチフルコースのペアリングが織り成す一夜となりました。

フランス料理とペアリング
日本の懐石料理の美意識が存在し、和食の要素を取り入れたフランス料理を提供する「Restaurant TOYO Tokyo」。
フレンチの枠を超えて西洋と東洋の融合と調和を感じさせ、日本酒の個性を引き立てるメニューが並びました。

- 若もろこしのアミューズ
- 岩牡蠣 エスカルゴバターソース
- 魚介の塩釜焼き
- 牛カツ
- 金目鯛の土鍋ご飯
- 南国フルーツとゴーヤのデザート
- お茶菓子


提供された日本酒
今回登場したのは、大納川の5銘柄。大納川の定番から遊び心あるラベルまで、酒質も表情も多彩でした。
- 大納川天花・純米大吟醸・無濾過生原酒・月ラベル
- 大納川天花・純米大吟醸・無濾過生原酒・鮨ラベル
- 大納川天花・純米吟醸・無濾過生原酒・エンジェルラベル
- 秘蔵酒・全国新酒鑑評会にて金賞を受賞した出品酒。2度目の金賞を受賞した10本しか無いうちの1本。純米大吟醸生原酒です。
- 大納川天花・純米吟醸・無濾過原酒・ハートラベル


主催者コメント
今回のイベントに寄せて、TOYO JAPAN株式会社 代表取締役 阿部洋介からのコメントを掲載します。
酒の会を通じてどんな事を考えるか
TOYO JAPAN株式会社 代表取締役 阿部洋介

大納川の代表の田中文悟さんとは、学生時代から体育会アメリカンフットボールを通じた仲で、そのまま新卒で入社したアサヒビール株式会社で同期となり、その後社会人アメリカンフットボールのシルバースターで共にプレーをしました。
また同時期にアサヒビールを退職して、同期のアメリカンフットボールの仲間が立ち上げたベンチャー企業にともに参画しました。東京への進出時ということで、当時事務所には3人しかいませんでした。
その後、右往左往しながら共に必死になって事業をすすめ、私は主に外食企業のM&Aに、田中社長は日本酒の酒蔵のM&Aを進めていきました。
そして、それぞれその会社を退職し、私はレストランビジネスでの創業と、田中社長は酒蔵再生で新たに起業をしました。
そして、現在酒蔵再生で大躍進をすすめる田中社長は、今や6蔵の酒蔵を経営しています。
株式会社日本酒キャピタル https://nihonshucapital.co.jp/
彼が手掛ける酒蔵再生は、その地域に根付いた小さな蔵を譲り受け、その商品を徹底的に磨き、そして蔵人達を率いて、持ち前のスーパー営業力で売上をあげていくといった道を究めつつあります。その前からも含めると彼が関わった酒蔵再生は何十蔵、足掛け15年以上、世代のおける第一人者になっています。あと10年、彼がこの道を切り拓けば、日本酒業界のイノベーターになると思います。田中社長を傍ら見てきたので、良いところも悪いところも理解した上で、私が感じております。
さて、今回酒の会をご一緒させてもらったのは、当店ソムリエの佐藤の出身地が秋田という事で、里帰りの際に大納川酒造にお伺いさせてもらったのがきっかけのひとつでした。

ほかにも、私と田中社長のご縁で、酒粕を使ったスイーツなども過去に開発をしてきました。
酒蔵「大納川」の酒粕を使用した濃厚なチョコレートバスクチーズケーキ – TOYO online
https://restaurant-toyo.online/products/sakekasu-chocolat-basque
酒蔵「大納川」の酒粕入りチョコレートチーズケーキ – mitaseru
https://www.mitaseru.com/products/restauranttoyotokyo_chocolate-cheesecake
当店も開業して7年、そして田中社長も矢継ぎ早に酒蔵再生をしていく中で、今後なかなか時間をとっていくのが難しくなっていくだろうと、ある意味最初で最後のつもりで田中社長と何らかの形になるイベントをといった想いで開催をお願いしました。ご無理を聞いていただいてありがとうございます。
我々が一緒にジョインした会社を去った後、久しぶりに再会したのも当店でした。

今回は、食の編集者、Food HEROes の代表をつとめる江六前一郎さんにも参加してもらいました。https://note.com/erokumae
Food HEROes は、30歳以下の料理人にスポットを当て飲食業界の人材難解決を目指す、コミュニティです。
https://community.foodheroes.jp/about
江六前一郎さんに田中社長も紹介し交えつつ、酒蔵再生、レストランに関してのお話をさせてもらいながら、気づいた点を書き留めてみます。
江六前さんとの話の中で、「芸事と産業」という表現を教えてもらいました。
以下は、江六前さんに紹介してもらったイタリアンレストラン「ブリアンツァ」のオーナーシェフ、奥野義幸さんのnoteからの抜粋です。
「芸事」とは、たとえば歌舞伎や宝塚歌劇団のような芸能活動のことです。
現代の飲食業では、「芸事」が認められなくなってきた|奥野義幸|ブリアンツァグループ オーナーシェフ
芸事では、個人が積み上げてきた芸をお客様に見てもらうことで対価を得ています。
そのために細かい動きから、歴史、道具の扱い方など、たくさんのことを勉強する必要があって、芸事に勤しむ方は、日々時間を惜しむことなく己の芸を磨いていらっしゃいます。
そんな芸事をしている人に対して、「労働基準法違反になるので、時間を守って芸を磨いてくださいね」とはいわないですよね。
「芸事」は、個人の判断で時間を使っていると思います。
では、「産業」とはどんなものでしょうか。
これは僕の考え方で違った意見があると思うのですが、「産業」とは国が税収を見込めると奨励するものだと考えています。
そして、その産業を支える「会社」は、人を雇用をして利益を出して、税金を払うことで国や社会に貢献する。
僕たちが修業を始めたころの憧れの料理人といえば、料理を極める「芸事」をしている方々でした。
異国のまだ食べたことがないような料理や、手の込んだ美しい料理をつくって、誰も真似できない芸をもっていらっしゃいました。
時間を惜しんで料理をし、営業時間外でも料理の腕を磨いて、すべての時間を費やす。
そうして得た料理をもってお客様から対価をいただく。
安くておいしい料理を提供するために、家族経営で朝から晩まで働いて高度成長期の日本を支えてくださった飲食店も、そういった「芸事」の方々だったと思います。
以前であれば、そういった芸事をしている料理人が営む店と、企業が展開する店は、分けて考えられていました。
しかし今は、国や社会が飲食業全体を1つの産業として見るようになったことで、芸事が産業に吸収され始めている。
僕たちのような料理人を「芸事をしている」と見てくれなくなってしまったんです。
https://note.com/okunobrianza/n/n3c2184ab5fa1
そんな中、昨今はホテルから3つ星店が出ているのは、正に「芸事と産業」を両立したモデルだと思われます。
ホテルは正に産業です。しっかりと作業工程がわかれ、その生産性などを高めてきました。
ホテルに宿泊しているお客様を対象として、そのラグジュアリーな内装を含めた集客といったのが象徴だったと思います。
その昔のホテルのレストランといえば、「ホテルのレストランだからね。」といったレストランとしての制約があった心象はあったのですが、ミシュランの三ツ星とは対峙した要素もあったかも知れません。
かつて、私も田中社長と同じ職場にいたときに、少しだけ一緒に酒蔵再生に関わらさせてもらいました。昔ながらの製造方法、流通方法、マーケティングだけは、50年前に出荷のピークだった日本酒市場は大変です。マーケットも1/5に縮小です。人手不足や少子化に関しては地方が主戦場なので、半端ないです。そういった経緯の中でも海外に販路を拡げる、手法などをドラスティックに改革したり、また徐々にトランスフォーミングをしたり様々な事情はありますが、日本酒業界からレストランも学べる事があると、イベントを通じて改めて感じました。正に「芸事」、「産業」の渦中だと思われます。日本における日本酒は国の歴史になります。私が再生に関わった酒蔵も350年以上の歴史がありました。
レストランもここ数年コロナでそういった動きが加速しました。大きな理由は少子化ですが、それだけではない社会の変化が起きています。そういった中、私達レストランも「芸事」でいくのか、「産業」でいくのかが問われています。
もしくは両軸で追いかけるのか。
当店の丸山和孝シェフは現在32歳。彼がシェフに就任したあとに寄稿した記事がこちらになります。少し前になります。
https://note.com/toyo_online/n/n45aa9d90d1d5
若いシェフは、新しいシェフ像を模索しております。
未来のレストランはどういった姿になっているのか。
そんな事を考える機会を日本酒の会でいただきました。
文悟さん ありがとうございました!

蔵元紹介:大納川(だいながわ)
秋田県横手市大森町にある小さな酒蔵。
「心を酔わす酒造り」を掲げ、蔵人が日々真摯に酒と向き合っています。
酒造好適米「あきたこまち」や「亀の尾」を用い、無濾過生原酒をはじめとする個性豊かな酒を醸造。
大納川 – だいながわ 秋田県横手市の酒蔵
https://dainagawa.co.jp/

